カレー将軍 鼻田香作の「ブラックカレー」を食べてみた


私の好きな料理マンガの中に「包丁人味平」という作品があります。



一応軽く説明すると、1973~77年に少年ジャンプで連載されていた、料理マンガのパイオニア的存在です。



中学時代の担任の先生が、味平の「仕事は人と人とをつなぐパイプなんだ!」というセリフに感銘を受けており、生徒に布教していた記憶があります。



子供の頃は何も考えずに楽しんでましたが、今の目線で見るとかなりぶっとんだ内容です。お吸い物勝負では混入した汗のおかげで勝利するわ、マグロの解体では火薬を使って爆破させるわ、その辺のドラムカンを拾ってきてラーメンを作るわとあり得ない描写のオンパレード。



まあそうは言ってもビッグ錠先生は後年の「スーパー食いしん坊」「一本包丁満太郎」でさらに激しくエスカレートしたトンデモ料理を披露しまくるので、味平はまだ全然マトモな部類ではあります。そう、カレーに麻薬が入っていたとしても。



味平のカレー戦争編はツッコミどころを抜きにしても、今見ても非常に面白い話なんですよね。料理マンガにおける勝負といえば審査員を用意して食べ比べをするというのが一般的で、味平もほとんど全部そういう感じなんです。が、カレー戦争編だけは「競合するデパートによる客の取り合い」が主軸となっており、そこのいちテナントのカレー屋としてどれだけ客を引き付けられるか?という、わりとリアル寄りでビジネス色の濃い話になっているのです。



単にうまいまずいだけではダメで、必要な人材をいかに引き抜いてくるか、デパート内のどこに店を出すべきか、店内はどんなレイアウトにすべきか、価格設定はいくらが適切なのか、デパートの客層に好まれるカレーとはどんなものなのか…




「荒れ狂う海上で小舟に乗りながら短時間にどれだけたくさん魚を焼けるか」などというわけわからんにもほどがある曲芸勝負を直前までやっていた漫画とは思えないほど、ハイレベルな知的戦略の応酬が描かれているのです。



そんな名作・カレー戦争編において味平のライバルとなるのが、カレー将軍・鼻田香作。「鼻が良すぎるために常に鼻マスクをしているモヒカン」という激しくいかれたビジュアルでありながら、正々堂々とした戦いぶりを見せる良いキャラクターでした。



そんな彼が強敵「味平カレー」に勝つために常軌を逸した試行錯誤を繰り返し、最後の最後に編み出した必殺カレー…それが「ブラックカレー」なのです。



50年前の漫画だしネタバレしちゃいますが、鼻田香作は味平カレーに勝てない焦りで怪しいスパイスの匂いを嗅ぎ過ぎたせいで精神に異常をきたしてしまい、ブラックカレーには麻薬に近い何かを入れることで客を依存症にしていたというオチでした。



これはなんだかスッキリしない幕切れだなあと感じてましたし、別にブラックカレーを食べたいとも思ってませんでした。作中でも「なぜか無性に食べたくなるけど味は別に良くない」って評価だったし…むしろ鼻田香作が普段作ってるノーマルなカレーの方が食べてみたいです。



しかし、現実に商品化されたとなると話は別。






なにゆえこんなものを商品化してしまったのか。

一体どんな怪しい味がするのか気になる。ぜひとも食べてみたい。



ただ、千葉の銚子電鉄で売られているといわれても、そこまでするほどじゃないかな…

と結局スルー。

さすがの私もそこまで物好きじゃなかったというわけですね。



それが1年くらい前の話で、既にもう忘れかけていたのに、いきなり

「ブラックカレー食べます?」

と差し出されることがあるとは…



私はただ日曜の朝イチで「子鹿のゾンビ」を見に行っただけなのに、それが元で「タローマン」を観ることになったり、ブラックカレーをゲットできたり、アストロ球団全巻セットを貸してもらえたり、

まったく人生何があるか分からないものです。



それで気になる成分表示の方をチェックしてみると、「炭末」以外には至極常識的な原材料しか使われていません。いや、「香辛料」の中に怪しいものが入っていると妄想して食べるべきかな。








作中ではコールタールのように真っ黒と表現されていましたが、私は黒ゴマあんのように見えます。

とはいえ味の方はまあ、そこそこ美味い真っ当なカレーでした。

ただ、これは私だけだと思うんですが、スプーンを口に運ぶたびに脳が別のものに錯覚するんですよね。どうしてもカレーじゃなくて黒ゴマあんの味と食感をリアルに想像してしまうんです。なのでカレーの味を感じるたびに「何か違う…何か違うぞ!」と妙な違和感を覚えてしまいました。




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